ふと思ったこと
学校を出て自転車をこいでいる夕方。
風にあおられて髪がゆれる。
そんなとき、ふと思った。
いつも同じ通学路を通って学校に行き、
いつも同じ通学路を通って家に帰る。
道自体は変わっていない。 でも、
確かに何かは変わっているのではないか、と。
夏には長かった日が、冬には短くなり、
田んぼの苗はいつしか穂を実らせる。
新しい家が建ったり、小さな花が咲いたり。
時は過ぎていく。
過去は2度と来ない。
空に浮かぶ太陽が、私の背中を紅く照らしている。
明日は、明後日になれば昨日に変わっている。
時は今を逃したら、もう戻ってこない。
過去に分類され、色あせていく。
それでもその中に、必ず忘れられない出来事がある。
それはこれからも増えていくんだろう。
夕日で半分紅い空は、私に考えさせる。
自転車から降りた時、
硬いコンクリートに、
靴のトントンという音が響いていた。
単純に聞こえるその音さえ
大切なこの世のひとつなんだ。